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インドネシアの人事労務

目次
1.インドネシアの労働法 ■労働基準関係法令
2.雇用契約書・労働協約と就業規則 ■雇用契約の概要 / ■就業規則の作成義務

1.インドネシアの労働法

 ■労働基準関係法令

インドネシアの労働関係法令で骨子となる法律は、「労働に関するインドネシア共和国法律2003年第13号」で、この法律はインドネシア人労働者・外国人労働者ともに適用となります。
インドネシアでは、1990 年代後半から労働関連法の整備が進められました。1997 年10月に制定された改正労働法は、労使双方からの反対の声により施行が凍結され、2002 年9月には改正案が廃止されました。それに代わる法律案として2003 年3 月に労働組合法(新労働法)が公布されました。更に、2003 年には労働者保護法、労使紛争解決法(2006 年1 月施行)と次々に制定されています。
新労働法は「労働民主化」と評され、雇用、賃金、ストライキ、解雇、退職金などを規定し、労働関係法令の基本法と位置付けられています。一方で、労働者保護に重点を置いた内容であるため、企業にとっては大変な負担増となりました。
そこで、外国投資の促進を目指す政府は、投資家からの強い要望を受けて、労働法改正を検討しましたが、労働法改正に向けて開催された政労使三者協議では、労働者保護に関する規定の多くが削除されていることに労働団体側が反発し、労働法改正に反対する労働団体のデモが3 月以降各地で頻発し、これにより、労働法改正案の国会提出は延期され、現在に至っています。

 ●労働法体系の概要

日本と比べてインドネシアの労働法の特徴は、残業や休日出勤、女性労働者の保護規定などで比較的水準の高い保護規定が多くみられます。さらに、現地労働者の労務管理を円滑に行っていくために忘れてはならないのが宗教関係の規定です。インドネシア人の約9割がイスラム教徒のため、例えば1日5回の礼拝の休憩時間や、礼拝のための休暇「レバラン休暇」をきちんと与えない場合、ストライキを起こしたり、突然退職をしてしまうこともありますので注意が必要です。そのため、事前にイスラム文化を知り、就業規則や雇用契約書の作成の際に留意することが大切です。ここでは主な労働規定を日本と比較しながら説明していきます。
まず賃金に関しては、日本もインドネシアも同様に最低賃金に関する規定があります。インドネシアでは、固定的な手当を含めた基本給の金額が、その地域の最低賃金を下回ってはなりません。就業時間に関して、日本では1日8時間、週40時間という法定労働時間の大枠が規定されています。一方インドネシアでは1 日8 時間以内、週40 時間以下が一般的となっていますが、週5 日の場合には1 日8 時間以内、週40 時間以下、週6 日の場合には1 日7 時間以内、週40 時間以下の選択をすることができます。所定労働時間を超えて働く場合には、労働者の同意を得たうえで、1 日3 時間以内、週14 時間以内で残業をさせることができます。残業や休日出勤の際の割増賃金については、法律で具体的な料率が定められていませんが、一般的には就業規則や雇用契約書で、150~200%前後で一律規定しているケースと、超過時間によって割増率を変えて規定しているケースがあります。
有給休暇は日本の場合、勤務月数によって付与される期間が決まっており(6ヶ月:10日/1年6ヶ月:11日/2年6カ月:12日/3年6ヶ月:14日/4年6ヶ月:16日/5年6ヶ月:18日/ 6年6ヶ月以上:20日) 、付与の条件として上記期間の出勤日数が8割以上とするのが一般的です。また、出勤時間、出勤日数が正社員に満たないアルバイト・パートについては、その契約に応じた比例付与の制度があります。
インドネシアでは、勤続1年以上は12日間の有給が付与されると規定があるほか、6年間以上同一企業で勤務した場合、2ヶ月間の有給休暇の付与が義務付けられていることが特徴的です。この他、忌引、結婚休暇、病休等の規定があります。

日本とインドネシアの労働基準比較
  日本 インドネシア
労働時間 1日8時間
1週間40時間
①1日7時間、1週間40時間の6日制
②1日8時間、1週間40時間の5日制
休憩時間 連続して6時間を超えて労働する場合には45分以上、8時間を超える場合には60分以上の休憩 連続して4時間を超えて労働する場合には、少なくとも30分間の休憩
残業時間 労使協定 労働者の同意
(1日3h,1週14h以内)
休日 週1日以上の休日 1週間6日間の労働に対して1日、または1週間5日間の労働に対して2日間の週休
割増賃金 時間外労働:1.25倍
※月60時間を超える時間は1.5倍の例外あり
深夜労働:1.25倍
休日労働:1.35倍
時間外労働には割増賃金を支払わなくてはならない。 ただし、具体的な割増率の規定はない
年次有給休暇 6ヶ月以上:10日以上
1年6ヶ月以上:11日以上
2年6ヶ月以上:12日以上
3年6ヶ月以上:14日以上
4年6ヶ月以上:16日以上
5年6ヶ月以上:18日以上
6年6ヶ月以上:20日以上
※上記期間の出勤日数要件あり
通常有給の持ち越しは2年間
12ヶ月間継続して勤務した労働者に対して12日間の有給を付与する また、6年間勤務した労働者に対して、少なくとも2カ月間の長期休暇を付与する

 

2. 雇用契約書・労働協約と就業規則

 ■雇用契約の概要

インドネシアの雇用契約については「労働に関するインドネシア共和国法律2003年第13号」の中の50~66条に定められています。原則として雇用契約は書面で交わさなくてはいけません。就業規則はインドネシア語で作成しますが、外資系企業では、インドネシア語と外国語の両方で記載しなければなりません。万が一、インドネシア語と外国語の記載で解釈の相違が生じた場合にはインドネシア語で作成された労働契約が有効な契約となります(労働法第57条)。
ジャカルタ周辺の日系工業団地へ進出している日系製造業などにおいては、企業の新規進出が伸び悩んでいるため、ワーカーレベルの従業員の採用は比較的容易な傾向にあります。一方、中間管理職の採用はやや困難です。特に、日本語の堪能なマネジャークラスの人材は不足しており、自社で育成することがほとんどです。インドネシア従業員の対日感情はよく、アジア地域の中では比較的定着率が高いといわれており、正社員で採用した場合の離職率は非常に低いと言われています。ただし、ワーカーレベルの場合、最低賃金での雇用が可能ですが、近年、毎年の最低賃金の上昇幅が大きいので、近隣諸国に対する労賃の優位性は必ずしも高いとは言えません。また、インドネシアは労働法が厳しく、一旦正社員として採用すると、解雇することが容易でなく、退職金の支払いが必要であるため、コストも企業にとっての大きな負担となります。そのために、企業によっては、従業員の多くを契約社員(コントラクトワーカー)として採用し、景気変動による影響を調整しているケースもあります。契約社員の定義、就業時間、賃金などは、新労働法(2003 年3 月)に規定されています。
通常、期間の定めのない雇用契約の場合には、労働者は3カ月間の試用期間が与えられ、その期間内に正式な雇用をするには十分ではないと判断される場合には、企業は労働者を解雇することができます。なお、試用期間中の解雇に関わらず解雇をする際には、企業は事前に書面による警告を3回行うのが一般的です。ただし、窃盗やその他の犯罪のような深刻な違反があった場合には警告なしで解雇することも可能です。
労働者への警告は、
① 1回目の警告後、6カ月間、
② 2回目の警告後、9カ月間、
③ 3回目の警告後、12 カ月間
が経過すると無効になります。
なお、前述のように解雇の場合にも退職手当等の支払いが必要なケースがありますので注意が必要です。
雇用契約には有期契約と無期契約の2種類があり、それぞれ条件が異なります。

日本とインドネシアの労働基準比較
雇用契約
労働法 労働に関する法律2003年第13号第50~60条に記載。
作成方法 ・書面形式で記載
・アルファベットを用いたインドネシア語と外国語の両方で記載する。
契約形態 有期契約 無期契約
条件 ・1回限りの業務又は臨時の業務
・短期間の業務で、最長3年以内の業務
・季節的業務
・新製品など調査中の追加製品に関連する業務
・左記以外の恒久的な性質をもつ業務
試用期間 不可 3ヶ月までは設定可能
※期間中も最低賃金額を下回ってはいけない。
延長 最長1年、1回限り可能  

雇用契約を締結することのできる年齢は原則として18歳以上で、通常企業側の条件が記載されている応募書類に記入し、企業側が行う試験を経て採用となります。また、入社時には企業側が指定する医師の健康診断書が必要です。なお、前述のように15歳以上18歳未満の児童については、一定の要件の下、就労することが可能です。なお、入社後の試用期間は、期間の定めのない雇用契約の場合に3ヶ月までは規定することができます。有期雇用契約の場合には、試用期間を設けることはできません。

 ■就業規則の作成義務

10人以上の労働者を雇用する企業は、就業規則を作成しなければなりません。就業規則は、大臣あるいは指名された政府職員による承認後に、発効となります。ただし、この就業規則の作成義務は、労働協約のある企業には適用されません。就業規則を作成する際は、労働者代表の意見と提案を考慮しなければなりません。既に労働組合が社内にある場合は、労働者代表は労働組合の役員が務めます。労働組合が社内にない場合、労働者側の代表は両者が合意する企業団体のメンバーか、労働者の利益を代弁する社内で民主的に選ばれた労働者がなります。
就業規則には、下記の項目を定めなければなりません。
・企業の権利と義務
・労働者の権利と義務
・労働条件
・企業の規律と行動基準
・就業規則の有効期間
就業規則は、労働関係法令に違反しない基準で作成しなければなりません。就業規則の有効期間は2年間で、更新の手続きが必要となります。就業規則の有効期間内に労働組合が労働協約作成の交渉を求めた場合は、企業はそれに応じなくてはなりません。労働協約の交渉が合意に至らなかった場合は、就業規則の有効期間までは、現行の就業規則が有効となります。

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